それから?



 たった一人の心が欲しかった。

 それだけが、願い。望み。生きる全て。

 なら、その後は? 手に入れたら、どうするの。

 

 ずっとそばにいたから、あいつの心はあたしのものだと思ってた。

 二人で一緒にいつまでも、恋人未満、友達以上。

 それが心地よかった。どうしようもないくらいに。

 でも、いつ歯車はズレた?

 気付けば、あいつは離れていた。もう、手も届かないくらいずっと向こう。声も聞こえない。見えない壁。そんな感じ。

 くやしくって、悲しくって、泣いた。

 結局、あたしは望んでいただけ。

 たった一人の心が欲しかった。それが願い。望み。生きる全て。

 それでも月日はめぐって、あたしは一人の寂しさに震えて、声を殺して泣くことしかできなかった。

 いつか誰かが、あたしの前にも現れる?

 そんなのうそ。偽り。こんなあたしの前に、一体誰が現れるというの。

 今でも思っているのに。

 あたしは、あいつの心が欲しかった。

 こんなに浅ましい自分を、誰が欲しがる。誰が愛す?

 結局、あたしは傲慢だったのだ。

 それでも、もし誰ががあたしを愛してくれるなら、幸せ。

 

 たった一人の心が欲しかった。

 それだけが、願い。望み。生きる全て。

 なら、その後は? 手に入れたら、どうするの。

 そんなの知らない。それこそ、あたしに聞かないで。

 そんなの、あいつを愛したやつに聞けばいい。あいつの心を手に入れたやつに聞けばいい。

 今はただ、一人の寂しさに震えて、声を殺して泣くことしかできないよ。

 

 ――だって、あたしはこんなにも弱い。

 さようならだけ、言いたかったな・・・。




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