雨天の村



 晴れの日は外に出ない。僕らの神が、負けている証拠だから。神が危険から守ってくれない、だから家にいる。ただただ神が早く勝つよう、祈るだけだ。

 ――ちまたでは、僕の故郷は雨天の村と呼ばれているらしい。雨を崇め、実際ほぼ毎日雨が降っているからだ。言い伝えによると、この村では昔、ひどい日照りで沢山の人が亡くなった年があった。この村の者達は、その時に喚んだ神の血を受け継ぐ末裔達の村だそうだ。

 雨天の村は、雨に恵まれた地。

 しかしある日、雨は止んだきり、ぱたりと降らなくなってしまった。村人は色々策を講じたけれど、雨は全く降らないままに、三日、一週間、一ヶ月・・・と月日は過ぎた。そのうちに、幾らかの村人が村を出た。それに乗じて、若者は村から離れていった。

 

 私もそうして村を出た者の一人だ。あれから十年、雨天の村はもう、雨天の村と呼ばれることはなくなった。風の噂で、振りすぎる雨のせいで草木の育たなかった村は今、多くの作物が実る豊かな土地になったと聞いた。

 神の庇護を信じていたあの村は、もうないのだろう。




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