<月> プロローグ
いつか、見た――おいてきぼりに、された、夢。 ひどい。 ただ、そう思った。 ひどい。どうして・・・どうして? 裏切られた、と思った。捨てられた、と思った。 おれは、悪い子なの? 失敗、したの? だからイラナイ、の? ――暗闇、を全身で感じながら、果てなく続く夢の中で嘆き疲れてまた眠る。 起きても闇。この頬は信じられないほど冷たくなって、瞳は開けられないほど熱い。 ・・・今、遠く、誰かの泣き声が聞こえる。この目は乾いてる。あの泣き声は、ダレカのもので、俺のもの。ダレカが泣かないなら、俺が泣く番。 ・・・けれど、もう大分、涙なんて流していない。ダレカの泣く声は、尽きない。
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