宰相の弟子

グレフィアス歴647年   9





 王都の街は区画ごとにまとまってはいるのだが、道は結構入り組んでいる。そのため、フィリウスのような少女が一人で歩くには危険な場所も、ままある。

 昼、フィリウスは数人の騎士達に混ざり、街を巡回している。その傍らにはバルカスが並び、あちらこちらと説明を加えつつ、巡回騎士達にプレッシャーを与えている。彼らは不運と言わざるを得ない。何故ならば、真面目に巡回しているところに予告なく上司に当たるフィリウスとバルカスが混じりこんできているのだから。お陰で彼らは抜き打ち試験さながらに緊張しているが、当の二人はいたって自然体だ。

 

 フィリウスの勉強に、ようやく一区切りがついた。

 基礎しか積み立てがないため応用の計算や敬語の表記といった細かいところから勉強を始め、仕事もしながらでその分時間もかかり、二年以上何かしら勉強していたことになる。だが、それでもまだまだ十分とは言えない。とりあえず一息ついた勉強の後は、城下について知ろうと思った。道は勿論、区画ごとの住民の違い、住環境など、もし著しい格差があるならば、是正していく努力をしなければならない。第二騎士隊は城下について一番詳しいため、フィリウスはバルカスに街の案内や説明を頼み、今の形となっているわけだ。こんな形での巡回も、もう四回目となる。

「で、この道が奥で右に曲がって、北区につながって・・・」

「なるほど、ではこちらを左なら南の貧民区に・・・」

「いや、そこは突き当たりになってるから、南ならあっちの道を入って真っ直ぐ・・・」

 フィリウスは紙にメモをとりながらバルカスの説明を聞いている。騎士達はそんな彼らを背後に黙々と歩く。その内の一人がふと視線を後ろにやると、フィリウスの背後に小さな影が忍び寄っているのを目に止める。

「フィリウス様っ!」

 警告し剣に手をかけるが、わずか遅い。小柄な影はフィリウスのはいていたズボンのポケットから財布を抜き取ると、一目散に脇道に逃げていく。その影を真っ先に追いかけたのはバルカスだ。次にフィリウス、騎士達と続く。

「おいこら小僧、止まれっ!」

 走り去っていくのは薄汚れた着衣の子どもだ。怒鳴り走る速度を上げるバルカスに負けず、子どもはとてもすばしっこい。しばらく後、とうとう見失い、悔しげな顔で後ろを見たバルカスは、ぎょっとする。

「・・・どこ行った?!」

 フィリウスも騎士達もいない。きっと追いつけなくて別れてしまったのだと思うと同時に、バルカスは大声を上げながら来た道を早足で戻り始めた。

「おーい、フィリウス! どこだ!」

 答える声はなく、さらに最悪なことに、三十分後に再会した騎士達の中に、フィリウスの姿はない。彼らもまた見失ってしまったそうで、青い顔をして慌てている。

「おいおい、嘘だろ、あのおてんば娘が! ・・・お前、何人か城から呼んできてくれ! あとの二人は、早く捜し出せっ!」

 バルカスは三人一組の巡回騎士達をバラけさせ、フィリウスを捜索させる。勿論自分もフィリウスを捜して走りつつ、頼むから危険な場所には行かないでいてくれよ、と願った。

 

 

 気付けば子どももバルカスも、途中で追い抜いていった巡回騎士達をも見失い、フィリウスは薄暗く汚れた、粗末な建物ばかりが立ち並ぶ場所へと足を踏み入れていた。うろたえて立ち止まる。

(いけない、はぐれた。・・・ここ、どこだろう)

 人影はなく、けれどひとのいる気配はある。睨みつけるような視線を背に感じ、肩越しにそっと振り向くと、男が一人出てくる。同時に、左手から、さらに右手と前方からも、刺すような目をした男が次々に出てくる。

(これ、は・・・やばい、かも)

 囲まれて、徐々に幅を狭めてくる。手には木片や石。殺す気かと思う。冷や汗を流しながら、震えそうな声を無理矢理抑え込み男達に声をかける。

「ごめんなさい、ここに勝手に入り込んだのは謝ります。すぐ出ていきますから」

 男達はじりじりと迫り続ける。本当にやばいかも、とフィリウスの顔が恐怖で強張ると同じくして、彼らは大股一歩分ほどの間を残して止まう。一人が口を開く。

「・・・金目のもんと食糧、全部置いてけ」

 あいにくとどちらも持っていない。逡巡すれば抵抗と思われ、男達は舌打ちをし、

「自分から出す気がないんだったら・・・身ぐるみ剥がしてやる」

 そう言い、最後の間を一歩で詰めると、四方からフィリウスに手を伸ばす。

「っ・・・!」

 フィリウスは前方の一人の腕を逆に掴むと、それをぐいと引っ張り体勢を崩させ、身を低くして逃げ出す。けれど背後の手が上着の裾をつかまえ、その隙に左右の手が両腕をつかんで後ろに引く。フィリウスはなお逃げようと身を捩った状態で尻もちをつく。

「痛っ・・・! お願い、待って、何も持ってない!」

「知るか。何でもいいんだよ、何か持ってんだろ」

「本当に、何も持ってません!」

「じゃあ・・・その服でもいい。売れば多少の金になるだろ。脱げ」

 男達は無遠慮にフィリウスの体に手を伸ばす。それに抵抗すると二人に体を押さえつけられ、残りの二人が上着とズボンにそれぞれ手をかけて、剥ごうとする。彼らの顔にいやらしい様子は欠片もない。ただ作業のようにフィリウスを裸にしようとしていることに、血の気が引いた。

「あ、貴方達は・・・ここは」

「あ? 貧民地区だよ。・・・あんたどうせ、道にでも迷ってここに来たんだろ。災難だったな。こんなところに女一人で、間違っても来るもんじゃねえよ」

 ズボンは膝まで下ろされ、上着のボタンの最後の一つに手がかけられた時。男達はいきなり、痛っ! と叫んで手を離す。そして人影が三つばかり駆け寄ってきたかと思うと、男どもの後頭部を石か何かで殴り、あっという間に大の大人四人を地に倒した。

「あんた、早く服着て、こっち来い!」

 さっさと走り去っていく人影の一人がフィリウスにそう命じ、その場に止まる。フィリウスは慌てて衣服を直し、また走り出したその人物に置いていかれないように、全力で走る。五分ほど走って着いた場所は、袋小路の奥の広くなった空間で、木箱やぼろぼろの毛布、欠けた食器など、何とも雑多としたものが散乱している。

 そして、その狭い場所に固まり警戒している、子ども達。その数、十人。

「全く、騎士には絶対手を出すなって言ったのに!」

 子ども達の中で一番年上の――それでもまだ十代半ばくらいの少年が、フィリウスと向き合いそう愚痴る。

「これ、あんたのだろ? しょうがないから、返す。だから・・・捕まえないでくれよ」

 差し出したその手には、フィリウスの財布。少年の右横にぴったりとくっつく子どもが、一瞬フィリウスに目をやり、視線を落とす。

「・・・盗っていったの、その子ね? 貴方の指図なの」

 フィリウスの問いに少年は頷き、

「ここにいるやつらの頭は、俺だ。俺が全部指示してるし、責任も俺が負う。でも、お願いだ。勝手なお願いだってわかってるけど・・・誰も、捕まえないでくれ」

 強い、射抜くような目で懇願する。フィリウスは差し出された財布を受け取らないで、やや考え込み訊く。

「・・・私が貴方達を見逃したら、何をしてくれる?」

 少年は身を固くし、それから苦渋のにじむ声で、何でもやると言い切る。フィリウスはまた少し考え、それから、少年と視線を合わすためにしゃがみこむ。

「じゃあ・・・」

 そして、少年のお願いをきくための条件を言った。

 

 

 正午から数時間。ここ最近のフィリウスの休み時間だ。

 昼を食べるとすぐ、フィリウスは堂々と門をくぐり城下へ行く。心配症の騎士達にバレたらまずこっ酷く怒られるだろうが、一人である。理由があって、そこには王宮の誰も連れていかない。待ち合わせ場所に着き、すでにそこにいた少年に微笑みかける。

「こんにちは」

「・・・飽きもせず、よく毎日来るよな」

「だって、約束じゃない」

「俺はともかく、あんたは破っても全然痛手のない約束だろうが」

「それはまあ、そうだけど。約束は守るものでしょう?」

「・・・脅しをかけたその口で、よく言う」

「何か言った?」

「いや、別に」

 ならいいけど、と頷いたフィリウスは、少年と横に並び歩き始める。

「今日はどこを案内してくれる?」

西区はほとんど回ったから、次は・・・北区にするか」

 少年はフィリウスの半歩前を、道を説明しながら行く。フィリウス一人だと危険な場所も、少年が一緒ならば安全だ。何故ならば、彼はこの若さで、西貧民区の頭の一人なのだから。

 

 フィリウスは、盗られた財布を受け取らなかった。その代わりに、少年に城下の案内を依頼した。弱みのある少年はその頼みを受けざるを得ず、少年が貧民区の頭の一人だと知ったのはその後だ。ちょうどいい偶然である。

 一時間かそこら街を回った後、フィリウスは頼まれてもいないのに、少年の世話する子ども達に文字を教えていく。借りを作りたくない少年は渋い顔をするが、フィリウスには何を貸すつもりもない。この子ども達の強みになるから教えておこう、という気持ちだ。炭で地面に文字を書きつつ根気強く言葉を教えていく。まだ十歳にも満たない子ども達は、初めこそ警戒していたが、今は全員がせっせと書き取りをし、熱心に文字を習っている。

 子ども達の中で、フィリウスが特に気にかけている子がいた。彼らの中で一番幼い男の子で、ぼさぼさに伸びた黒い髪と白に近い青灰色の目が汚れていてさえ映える。フィリウスの財布を奪ったのはこの男の子であり、走るのは大人顔負けに早い。だが、この子にはできないことがある。・・・言葉が話せない。つまり、声が出ないのだ。病気か精神的なものかはわからない。頭の少年が男の子を拾ったのが、正式に何歳かはわからないが、大体男の子が二歳くらいの時で、その時から男の子は泣きも喚きもしなかったという。――言葉が喋れない孤児。フィリウスには、それがとても致命的な弱点に思える。

 

 途中で買った昼食を今日も今日とて子ども達と分け、文字を教えながら昼を過ごす。時間に追われ、駆け足で王宮に帰る。そんな毎日も、もう数日目だ。

 ・・・そして奇跡的に、誰にも城下へ下りていることがばれず、初めの日からひと月が過ぎるより少し前に、少年はフィリウスの条件、全ての貧民区の案内をようやく果たした。

「ありがとう」

「もう、来るなよ。今度襲われても、二度と助けないからな」

 フィリウスは少年の言葉に微笑みを返す。そして、束の間の生徒達に、元気でと声をかける。子ども達は寂しそうな顔で頷く。

 くるりと後ろを向き、未練などない様子で立ち去ろうとしたフィリウスの腕を、誰かが引っ張る。振り向くと、あの喋れない男の子が、フィリウスの腕を小さな手で掴んでいる。どうしたの、と声をかければ、男の子は薄汚れた布の切れ端を差し出す。わずかに首を傾げながらそれを受け取ったフィリウスは、そこに書かれた文字を目で読み、

「・・・これって」

 男の子に、視線を戻す。

「・・・これは、貴方の、名前?」

 男の子はこくりと頷く。驚いた他の子ども達が下からフィリウスの持つ布をのぞきこみ、一人が代表して訊く。

「これがお前の名前? 親がつけた名前、覚えてるの? 覚えてたんだ?」

 男の子はもう一度頷と、何かを期待するような目でフィリウスを見上げる。

「・・・リディエール?」

 名前を呼んでと言われている気がして口にすれば、男の子――リディエールは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 秋、そろそろ冬の足音が聞こえる季節。執務室に近付く足音が聞こえて、扉の外でシィザと誰かが話す声が聞こえる。フィリウスは立ち上がり扉を開けると、どうかしたのと尋ねる。シィザに事情を説明していた騎士はフィリウスを見て、

「ああ、フィリウス様。その、今、正門に妙な子どもが来ているのですが・・・」

 ほっとしたような、不安そうな、そんな微妙な顔でフィリウスに詳細を短く告げる。

「・・・嘘。どうして?」

 そしてそれを聞いたフィリウスは、信じられないと首を振り、早足で正門へ向かう。騎士が追いかけていき、シィザはユリウスに一言断った後、先に行った二人の後を追い廊下を走っていく。

 ユリウスは一人になった室内で、かたんと小さな音を立て、ペンを置いた。

 

 正門には騎士が数人集まり、小さな影を囲んでいる。その顔はどれも一様に困った様子で、フィリウス達を見ると明らかにほっとしたように表情を緩める。

「遅いぞ」

「悪い」

「ごめんなさい」

「あっ! いえ、別にフィリウス様を責めたわけじゃなくて・・・」

 騎士達が慌てて何か弁解している間、フィリウスはじっとその子どもと向き合った。汚れた寒そうな服。最後に梳かしたのはいつかと思われるぼさぼさな、けれど黒々とした髪。目ばかりが静かで、ぴかぴかと輝いている。

「・・・リディエール」

 名を呼べば、子どもは嬉しそうに笑う。その時、ああしまったと、フィリウスは思った。作り笑いを浮かべ、リディエールの目線までしゃがみこむ。

「よく、ここがわかったね。今日はどうしたの?」

 リディエールは手に持った炭で地面に文字を書く。フィリウスはそれを見て困惑する。

「でも・・・リディエール。私は、貴方達の仲間ではないの」

 それに答えて、また文字が書かれる。

「・・・駄目よ。私があそこにいることで何かがよくなる理由は、一つもないの。私は、必要以上にあそこに行かない方がいい。勿論リディエール、それは、私と貴方はあまり仲良くしない方がいいって、そういう意味でもあるわ」

 子ども相手に率直すぎるとは思う。現に、背後の騎士達やシィザが、何か言いたそうな顔でフィリウスを見ている。

(でも、これはいけない。はっきり言わないと。だって)

 ・・・自分の行動がこの子どもの人生を左右するかもしれないと考えたら、とてもではないが優しくはできない。

 

 リディエールは、フィリウスに会いに来た。フィリウスが好きだから、文字を教えてくれた先生だから、離れたくないと言った。

 それがそういう意味か、わかってはいないだろう。フィリウスと西の貧民区に暮らす少年はほんのちょっとの間契約していただけで、お互いの領分に踏み入る気は決してなかった。フィリウスは文字を教えたが、彼らがどんなに大変でも金や食事を援助し続けるつもりはなかったし、関係を続けるつもり自体そもそもなかった。もしその場限りの同情でそれらをしたら、同情などいらないと少年は怒るだろうし、結局ただの自己満足以上の何者にもならない。格差をなくそうと思うならば、ほどこすのではなく、原因を絶たなければ。それができるだけの権力は直に手にする。後はそれを、どう使うかだ。

 この権力を保つためには、どれか一つの団体や一人の人間に、肩入れしすぎてはならない。それは初手としては有効かもしれないが、足を引っ張られる理由にもなる。例えば格差を無くすために貧民区の住民に相応の金を配るとしよう。すると、肩入れしている団体や人間に、個人的な思いから、または脅迫されて、余剰に金を配ることになるかもしれない。私情があれば、公平な行動はとれなくなってしまう。公平でない策には、穴ができる。

 ――つまり。そうした憂いをなくすためには、初めから関係を持たない方がいいのだ。

(あの少年は、きっとそれをわかっていた)

 案内を依頼した時、フィリウスは自分の地位も明かしていた。だから少年は、互いが関係を持ち続けて頼りあい、また食いつぶしあう危険性を憂慮したはずだ。

 納得しないリディエールの説得を、あの少年に頼むべきかと考える。しかしそれより簡単な手があると気付き、フィリウスはその問いを口にする。

「リディエール。・・・貴方は、仲間と私、どちらを選ぶ?」

 二択の答えは、常に一つ。リディエールはほんの少しの躊躇の後、

「――――!!!」

 予想に反し、フィリウスの名を地面に書く。怒ったような、悲しそうな顔で。

「・・・駄目、それは駄目よ。リディエール、お願い、よく考えて。私なんて、ほんのちょっと話をして、文字を教わった、それだけの人でしょう? 何年も貴方を育ててくれて、ずっと一緒に暮らしてきた、皆の方が大切でしょう?」

 激しく首を横に振り、リディエールはフィリウスという名をいくつも地面に書き殴る。何で信じてくれないんだ、そんな声が聞こえてきそうなほど、激しい筆跡で。

「リディエール・・・」

 フィリウスが言葉を失っていると、場を支配するほど涼やかな声が、背後からかかった。

「子どもだろうと大人だろうと、選択にかかる重さは同じ。フィリ、貴方には、その子の想いを退けるだけの理由はありません」

 振り返れば、シィザや騎士達の背後に、堂々とユリウスが立つ。ひどく静かな、波一つない目が、フィリウスにだけ向いている。

「・・・先生、ですが」

「貴女にはその孤児の行く末を決める権利はありません。少しでも関わったならば、他者に及ぼす影響の責任はとるべきです。・・・貴女が保証人になって、孤児院に入れなさい。そして、仲間との交流を一切絶たせれば、問題はありません」

 その言葉にフィリウスはかっとなり、

「交流を絶たせるですって? 先生、そんなこと、こんな子どもに強制するつもりですか!」

 それにユリウスは、全く動じもせず、

「子どもというその思いが、どれほどこの孤児を侮っているのか。自覚はあるのですか?」

 ぐっと言葉をつまらせたフィリウスに、ユリウスは続ける。

「その子は、貴女と仲間との二択で、貴女を選ぶと言っているのです。それに見合う犠牲は・・・もう、覚悟しているのではありませんか?」

 動いた視線の先を追えば、リディエールは何事かを地面に書いていた。

「・・・リディ、エール、貴方」

 書かれたその言葉に、フィリウスは愕然とする。

 “お姉さんのところに行くなら、もう二度と戻るなとお兄さんに言われたけど、ぼくはそれでも、お姉さんがいい”

 ――リディエールは、選択した。選んだのは彼自身だが、その背を押したのはフィリウス。・・・ある一人の存在が他者に及ぼす影響の、最たる例を、フィリウスは自らの身を持って経験した。

 

 

 リディエールは希望通り、フィリウスの管理下に置かれることとなった。フィリウスを保証人として孤児院に入れられ、二度と仲間達と会わないよう約束させられる。

 

 どうして会ってはいけないの? と思わないわけはない。しかし、少年もフィリウスも大人だ。大人には大人の事情がある。会えないのは寂しいし悲しいけれど・・・どうしても捨てきれない希望のために何か犠牲を払うのは、しょうがないことなのだと、大人は誰もが言っている。

 フィリウスの側にいたい。もっと勉強を教えてもらいたいし、たくさん色々なことを勉強したい。・・・知ってしまった欲望のために、何かを捨て、何かを選ぶ。

 

 リディエールが子どもながらにとった行動が、最終的にどこに行き着くのか。それは、まだ誰にもわからない。




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