エピローグ
あの魔王の蹂躙からきっかり十年後、アーシェルトは今度こそ亡びた。英雄は二度と英雄たることなく、王もまた英雄になりえることはなかった。 二度目の破壊を繰り広げた魔王の左目は、あの藍色。元の持ち主とどこか似た、優しそうな目をして、国を亡ぼしていった。 わずかに生き残ったアーシェルトの民は語る。 一度は亡びを退けた国も、二度目は消えるしかない。英雄は何度も生まれはしないし、永遠に亡びない国などない。勇敢で聡明な王の遺体の側には、王を支え続けた二人が共に。三人の若者が、国に殉じた。 ――またその数年後、どこからともなく一つの噂が広まった。 赤と藍二色の目をした魔王は、今は二人仲良く寄り添って、国を亡ぼすこともなく、穏やかに暮らしている、と。
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