何かが変わると思った

プロローグ   1





 私は、家族が大切だ。

 

 真面目な母親。

 優しい父親。

 明るい兄。

 

 かけがえのない、家族。代えのきかない、たった一つきりのもの。

 

 

 ――それだから私は、家族が大っ嫌いだ。

 

 もし、もしも、私のせいではなく、失うようなことがあったなら。

 きっと、とても清々しく思うことだろう。

 

 

 

 

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 大学という新天地は、期待していたほど目新しくはなかった。男も女もグループを作る。着飾った奴らと、じめっとした奴ら、二つの集まり。鬱陶しい、嫌いだ、こんなもの。

 最終的に群れるしか能のない女ども、どちらにせよ女の尻追って目を動かす男ども、よかったね、色恋事でキャーキャー言ってる余裕があって。そんなもの、馬鹿幸せに生きてるやつしかできやしないんだよ。

 恋とか愛とか。友情とか熱血とか。何それ、何でそれが普通なの? 普通目指すなら、四六時中そんなこと考えてなきゃいけないわけ? 馬鹿馬鹿しい、そんなものなくたって、生きていける。

 大学出て、就職して、親に仕送りしながら細々と生きて、親が死んだら葬式出して、小さな墓立てて、一周期くらいはやって、それからは時々花を供えに行ってやる。ああ、娘だからね。そういう義務は、果たす。風習と世間の目に刃向うのなんて、面倒。

 

 ……大嫌いな家族様方。十織はこの通り、元気でやっております。だから、放っておいてください。あなた方のお手をわずらわせるようなことはしません。かかったお金はこれから稼いで返していきます。あなた方から奪った時間までは返せませんが、それは私が一生、罪として背負っていくので、勘弁してください。




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