リィスのひとびと

<友情七題>   3.無言でいてくれる優しさ





 絶句して硬直するハナに、キキは憐れみの視線を注いだ。

「・・・キキ」

「・・・」

「・・・何か、言えば」

「・・・」

「・・・言いたいこと、あるでしょ。言えば」

「・・・いや」

 ご愁傷様、運が悪かったね、いやむしろ、運が良いね。・・・そう言っても、怒鳴られることはわかっている。じりじりと距離を取り、目を合わせないように微妙に逸らす。まるで森で熊に会った時のような対応だ。ハナが、そんなキキの様子に気付かないはずがない。顔をしかめて無言ですたすた歩いてくる。それに合わせて、キキも後退する。

「・・・何で離れるのよ」

「・・・いや」

「別に、何もしないから。止まりなさいよ」

「・・・いや」

 距離を取り続けるキキに、ハナがついにキレた。

「・・・あー、もうっ! 何その態度、ムカつくんだけど! はっきり言えばいいじゃん! 笑えばいいでしょ?! 馬鹿キキっ!」

 怒鳴られても、キキは憐れみの視線を向け続け、何を言うでもするでもなく、ふうとため息を一つつくのみ。

 結局そのまま、キキは慰めの言葉も、からかいの言葉も、言うことはなかった。

 

 

 まあ、たまにはあるさ。犬のウンを踏むことだって。何言ったって落ち込むしかないんだから、何も言わないっていうのも一つの手だろう・・・と、キキはそう、二日後に口にして、情けない事実からようやく立ち直りかけていたハナを、もう一度落ち込ませた。




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