リィスのひとびと

<友情七題>   2.負けてくればいいさ





 負けないわよ、とガッツポーズを作るハナを横目で見つつ、キキは心の中で、いやいっそ負けてこい、と思う。とりあえず、生暖かい目で見守ることにした。

 

 

 ハナにはライバルがいる。・・・それも、沢山。

 このハナという少女は、性格にやや難ありだが、成績はよく、顔もよく、運動もできて、当然モテて、それでいて女友達も多い。それでも、完璧ではない。全てにおいて人並みより上程度では、何か一つに特化している人間にはとてもでないが敵わない。

 今日のハナは、学年一の秀才、ナンナに勝負を挑んでいる。勿論勝手に。ナンナもいい迷惑だが、この才女はクールで大人びて、ハナの敵対心など微笑で受け流す。

 今日の小テストは三つ。数学、生物、語学。ナンナの得意科目は数学、ハナの得意科目は語学なのだが、ナンナは語学でもハナよりいい点を取る。

「今日こそ、勝つわ!」

 ハナはそれでも意気込む。語学も数学も、負けるつもりはさらさらなく。

 

 

 そして放課後、ハナは悔しがっていた。むすっとした顔でキキの隣を歩く。

「あーあ。なんで問六、間違っちゃったんだろ。あれ書けてたら、同点だったのに」

「注意力の問題だろ。どうせ、ちゃんと見直ししなかったんだろが」

「したよ! しーまーしーたー」

「じゃあ、やっぱり注意力の問題だろ」

「むー・・・」

 ハナはキキに言い負かされて、唸りながら沈黙した。

 ・・・ライバルに負けた日のハナは、くよくよと鬱陶しいが、静かだ。

 

 

 

 

 キキはだから、いつも、ハナに勝ってほしいとは思っていない。――それどころかむしろ、俺の平和のためには、勝つよりも負けてこいと、そう思ってさえいるのだ。




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