<鈍感七題> 4.今日は朝から待ち惚け
サーラは一人、店の中ほどに立つ。やや早い昼前、普段なら、とっくにパンが用意されて店を開いている時間だ。 「怒られる、だろうな」 サーラはそう呟いて苦笑する。・・・まだ、マエストロは眠っている。 マエストロが寝坊するなど、珍しいことだ。起こせばいいのだけれど、昨日は遅かったし大変だったから、きっと疲れているのだと思う。 準備中の札すら出さず、サーラは店の掃除をする。床を掃きモップで拭く。陳列棚は布巾で拭き、窓も綺麗にする。店の前を箒で掃き清め、今日は遅いねと話しかけてくる近所のおばさんに、マエストロがまだ寝ているのと苦笑い。疲れてるみたいだから起こすのが可哀想でと言えば、優しいねと笑顔を向けられる。 「そうかな。・・・でもきっと、怒られると思うわ」 そう小さなため息吐けば、じゃあそうなったらうちにおいで、慰めてあげよう、とおばさんは笑った。 店の中に戻る。と同時に、階上からばたばたと慌てた足音が響く。マエストロが起きたんだなと思い、その場で立ったまま待ち受ける。 「・・・サーラっ! 何で起こさなかったんだ!」 やっぱり怒鳴った。けれど、その表情は困惑したような、頼りなく情けないものだ。おそよう、と答えながら、サーラは微笑んだ。 その日は結局、臨時休業となった。たまには、こんな日もある。
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