セリオールの手記

プロローグ





 この世界アイの本は“神の書記者”によって書かれた。そして、四人の神の書記者の中、たった一人“書の母”と異名をもつ者がいる。

 彼の名はセリオール。その姿を知る者は、一握りもいない。

 

 

 

 

 

 

 ぼくを囲む、沢山の本。一つ一つ埃を払って、古書屋のおじちゃんに手渡す。大事にするよと、おじちゃんは微笑んで言った。ぼくは頷いて、一冊を残し、他は全部おじちゃんに預ける。

 ぼくが手元に残したのは、題名のない冊子。それは正確には本ではなく、中身は個人の“手記”だ。……この手記を記したのは、書の母たるセリオール。

 手記の最後のページには、誰もがよく見慣れた細く繊細な文字で、こう書かれていた。

『君に会いたい。私は今、ルーナリアにいるよ』

 ――ぼくは、セリオールに会いに行くことを決めた。




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