一章 “変化の風” 4
「・・・少年。大丈夫か?」 シルフィラは火に当たっていながらも震えて、青白い顔をする少年にそう声をかけた。明らかに様子がおかしい。自分は何か、おかしなことを言っただろうか。 「あ、平気・・・だけど、すごい混乱してて・・・。ど、どうしようかと思って」 はてなと疑問符が頭に浮かぶ。 「どうしようって? 何か事情があるのか? ええと・・・」 「・・・光良だ。呼びづらければ、コウでもリョウでも好きに呼んでくれ」 口の中でどもっていると、少年はそう言ってきた。では、コウとでも呼ぶことにしよう。 「じゃあ、コウ。こんな森の中に、あんたみたいな子供が一人でうろついているのはどうかと思うぞ。見たところ武器もないし。魔法を使うのかもしれないが、やはり武器の一つもないのは心もとない。それに・・・チキュウってなんだ?」 少年はいまだ青白い顔で、どう答えようかと逡巡しているようだった。震えも収まらないのか、自分の肩を抱くようにしている。それと対照的に、シルフィラの頭痛はすでに治まっていた。 「あー・・・、わかんね。地球ってのは俺がいたところで、俺はそこの日本って国に住んでて・・・。そこ平和だからさ。武器なんか常備してないし。魔法? そんなの、使えないし・・・。知んねぇよ、俺がわけがわかんねぇ」 ・・・まあ、動揺だけはよくわかる。 「えっと・・・俺もよくわかんないんだけど。なんか話しだけ聞いてると、こう、子供向けの童話みたいに、「勇者様は悪者を倒すために、ぼくたちの世界へきました」的な。つまり、うんと、なんかそこって別の世界みたいな感じだけど、気のせいだよな?」 シルフィラはそう言って、小首を傾げて微笑んだ。何だか不安げな少年を安心させようと思っての行為だったのだが、それを聞いた少年の顔色は冴えない。 「・・・それが一番高い可能性だって言ったら、どうすんの? あんた・・・」 どうやら、そうらしい。シルフィラはえ? と間抜けな声を上げて、少年の顔を凝視した。
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