fate and shade 〜嘘と幻〜

二章 “遺跡にて”   4





 ここでもやはり、道はひたすら平坦に、長く真っ直ぐに続いている。それだけを見ると落ちる前に歩いていた場所との違いはほとんど感じられなかった。

「なあ、いつまで続くんだ? これ」

 さすがに長すぎると思ったコウは、しびれを切らしてシルフィラにそう尋ねた。

「んー・・・もうちょっと? どーゆう遺跡か知らないけど、まあ、気が滅入るくらい長くて平坦だよなー」

 その答えに、コウはため息をついた。まあ、聞いてわかることでもなかった。

「長いよな」

「長いな」

 同意の言葉は言ってくれるようだ。

「・・・ん? ちょっと待て。止まれ、コウ」

 そんな軽口の最中、突如シルフィラはコウの進軍を押しとどめた。

「なんだ?」

「剣戟の音が・・・かすかだけど。誰かいるみたいだ」

 コウの耳には聞こえない音を、シルフィラはいち早く察知した。

「剣戟・・・?」

 何だか穏やかでない言葉だ。それの意味するところはつまり・・・。

「誰か戦ってるってことだな。魔物か、それ以外の何か・・・まあ、十中八九は魔物か」

 シルフィラが淡々と解析する。

「・・・行かなくていいのか?」

 コウが聞くと、シルフィラはひどく驚いた顔を少年に向けた。

「行くの? 危険だよ?」

「んなのわかってる。どっちなんだ。行くのか? 行かないのか?」

 コウはシルフィラの当たり前の問いかけにかなり不機嫌に答える。シルフィラはそのコウの様子を見て笑った。

「コウ、結構お人よしだね。危険とわかっていて、行くんだ?」

 シルフィラの言葉は、褒めるでもなく、非難するでもなく。それが逆にコウの神経を逆なでする。

「うるせぇ。俺はいつも自分本位で生きてるんだ。別にお人よしなわけじゃなく、行こうと思うから行くんだ。第一、行くとも行ってねぇ。いちいち揚げ足とんな。うっとうしい」

 シルフィラは声を上げて笑い始めた。

「・・・なんだよ」

 半眼になったコウを見据えて、シルフィラは笑いの間に声を出す。

「結局、行くんでしょ? いや、かわいいなぁ〜と思って、ね」

 ――シルフィラはそのすぐ後、無言のコウに思い切り蹴られた。




前へ   目次へ   次へ