三章 “断罪と死” 12
窓がないのでわからないが、夜が明けたらしい。壁を隔てて、鳥の鳴く声がかすかに聞こえる。太陽の光はないのに朝だとわかる感覚は、なんだか変わっている。 松明の光が、ジッと音を立てて揺れる。静かに時を過ごしていた三人は、その反応にピクリと反応する。・・・風が、入ってきた。 「起きてるか?」 聞こえてきた他人の声に、スッと気配を険しくしたのはリィン。シルフィラはニコリと笑って返事をした。 「全員、起きてるだろうね。それより、何が何だか説明してもらいたいな。何の理由があって、俺たちを捕まえたんだ? もう一人の仲間は無事なのか? 一体、ここであんたらは何をしているんだ?」 「そんな矢継ぎ早に質問されても、答えられねぇよ。――どれが一番聞きたい?」 コウは黙ってシルフィラに会話を任せている。シルフィラは間を持たずに、 「ミナはどこだ」 それだけを聞いた。 「ミナ? ああ、あの魔術師のことか。しっかり役に立ってもらってるよ。――力が有り余ってるみたいでな。他の奴らとは全然違う手ごたえが得られた、と主も喜んでる」 「一体、ミナに何をした」 手ごたえ、という不穏な言葉に、シルフィラがスッと目を細める。コウの位置からではその話し声が聞こえるだけで、二人の姿は確認できないが、シルフィラの声の響きが変わったことには、十分気付けた。 だが、男はそうでないらしい。相手は牢屋の中、とたかをくくっていたのかもしれないが、あざ笑う声がコウのところまでしっかり届いた。 「主がより強い力を手に入れるための布石になれるんだ。光栄に思ってほしいところだぜ」 ――シルフィラがキレた。 沈黙を守っていたコウの耳に、鋭く早い詠唱の声が聞こえた。それと同時に強い風が一陣吹き抜け・・・ゴトンと、鈍い音を立てて鉄で出来た格子が切れた。 「っ?!」 流石に予想していなかった現象にコウは声もなく引きつった。その間にリィンは牢屋の外へと出たらしい。男の罵声が聞こえると同時に、剣を振るう音が響いた。 「コウっ! 脱出するぞ!」 固まったコウの耳に、シルフィラの声が響いた。 (・・・なんかやるんなら、先に言っとけよー!) 全く、心臓に悪い・・・と思いながらも、すぐさま立ち直ったコウであった。
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