三章 “断罪と死” 16
シルフィラは適当に詠唱を繰り返して、どこからともなく襲いかかってくる敵を、風で吹き飛ばしたり水をかぶせて危うく溺死させかけたりしていた。コウはいつの間にかフォークとナイフを取り出し、それで接近戦も遠距離戦もしっかりとこなしている。二人とも深追いはしない。自ら襲いかかってくる者を倒しているだけだ。――目的は足止めであるからだ。 「・・・コウ、そのフォークとナイフは?」 「あん? 酒場からかっぱらってきたんだけど」 「・・・あ、そう。殺すなよ?」 そんな会話を織り交ぜながら、普通に余裕だった。 「っ! 強いぞ、コイツら」 わいてくる敵たちの一人が、そう叫んだ。その言葉に、シルフィラは笑って言った。 「当然だよな、コウ」 コウはナイフをシュッと投げ、またどこからか新たに取り出して自信たっぷりに言った。 「もちろん」 すると、どこからか第三者の声が割り込んできた。 『そうか、当然か。ならば、我がお前たちより強いのも、また然り』 「なんだ? ・・・危ない、コウ!?」 シルフィラがコウに忠告したときには、すでに遅かった。シルフィラとコウの間に壁のようなものが突如現れたと思うと、それはすぐにコウを包み込むようにしてくるりと巻いてしまった。何か言いかけたコウの声が、単語にもならずにぶつりと途切れる。 「コウっ!!」 叫んだシルフィラの元に、さらに誰かの声が響きわたる。 『せいぜい利用させてもらおう。お前のことは、また後だ』 そして、突風を巻き起こして。その声も、壁に包まれたコウの姿も、消え去った。
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