fate and shade 〜嘘と幻〜

間章   1





 信仰心も信頼も、真実なしじゃ得られない。

 ――でもね、そんなの必要ない。

 結局誰も、本気で信じちゃいないんだから。

 

 

 一行は黙々と、ただ黙々と歩き続けている。遠ざかるためだ。あの炎の町から。元来た道を戻らずに森の中を延々と進んでいるので、正直、おおまかには推測できてもはっきりした場所の特定はできない。一度大きな街道にでも出るべきだが、それも後回しにしてとりあえずは出来るだけ遠くへ行こうとしていた。

 日が暮れるまで歩き続けて、やっと歩みを止める。一行はまだ森の中、そこで野宿の準備をはじめた。

 コウとリィンが薪を拾い、シルフィラは簡易結界をはり、今日は珍しく、ミナが食事の準備をしていた。と言っても、携帯食料を鍋にぶちこみ香辛料で味と香りを付けるという簡単なものだが。

 それだけならば、何も変わりはない。野宿時の役割分担をそれぞれがこなしているだけだ。遺跡で出会ったとき。そして昨夜。もっとも、昨夜は食べ損ねたが。大きな違い、それは・・・出来上がった鍋の中身を、美味しそうに食べているナニカだった。

 手の平に乗ってしまうほど小さな、人の形をしていた。黒い髪と目が、コウのそれとは違って、本当に漆黒だった。一片の曇りもなく、混じりもない。純粋すぎる黒色が、闇夜でかえって浮き立ってみえるほどだ。得体の知れないナニカが、今、四人の目の前で携帯食料in鍋の中身を実に美味しそうにいただいている。

 四人はじー、とその様子を見ている。自分の茶碗に手を伸ばすこともなく、じーー、と。ひたすらじーーーーーっと見ている。

「・・・あれ、食べないのー?」

 気付いて問いかける。すると、コウがかなり険悪な顔をした。シルフィラはすっかり増えてしまった苦笑いをして、ミナとリィンは微妙な表情でお互い顔を見合わせる。そして四人同時に言った。

『あんた、誰』

 そのナニカは、問いかけに目を丸くして、「あれ〜?」と気の抜けるような声を発した。




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