fate and shade 〜嘘と幻〜

間章   13





 葛藤、というけれど、一言で片付けるにはあまりに簡単すぎる感情だ。

 誰しもが葛藤を繰り返す。悩みを繰り返す。後悔も、繰り返して・・・それでも変わらない物事が、変われない物事がある。

 夜になって森が寝静まると、炎を見つめる瞳に、夜空を見上げる瞳に、四人それぞれの葛藤が色となって現れる。わずかな変化はきっと自分でも気付かないけれど・・・時折言葉となって、形となって現れ始める。

 ただ何も見ず、ぼーっと虚空を見つめたり。炎が小さくなるまで、焚き木を放り込むのを忘れていたり。小さな小石につまずいてみたり。ぽつり、とナニカを呟いてみたり。

 葛藤には種類がある。ほんの小さな悩みだってヒトによっては葛藤だし、大きな悩みでも葛藤と結び付けようとしないヒトだっている。それは千差万別で、同じモノなどないからこそ・・・。

 ――ああ、楽しい。

 黒精霊は、ヒトの葛藤を喜んでいた。そして、望んでいた。

 過去、というモノが現在に落とす影を、長い月日を過ごすうちに黒精霊は知った。そう、誰しもが葛藤を繰り返す。悩みを繰り返す。後悔も、繰り返して・・・。黒精霊は、人間でない自分にはきっと体験出来ない、その過程を見つめることが、好きだ。

 いつかヒトに言われたように。――いつか人間の感情が、わかると信じているから。




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