間章 7
あさー。あさー。あさー。あさー・・・ 子供のような声が、朝だ朝だとコウの耳元で言い続けている。 あさー。あさー。あさだよー? ボクの愉快な仲間達、起きてー? 「・・・っざけんなー!! 何が“ボクの愉快な仲間達”だっ!!」 コウは大声を上げながら飛び起きた。目の前には声の主――黒精霊がぷかぷかと。満面の笑みで、まだ上がったばかりの太陽を浴びている。 黒精霊は文句を言ったコウに対してニカッと笑い、あさ、あさと言い続けていたその声でまたコウがムカつくようなことを話し出す。 「ボクのが格上だもん! だから、みんなはボクの愉快な仲間達っ!」 「ざけんな?! 何が根拠でお前のが強いってんだよっ!」 「根拠はたくさん! 説明するのも大変だよ? あ、でも、どうであっても、コウはこの中じゃ最弱だよねー」 「うるせぇっ!! 余計な世話だ!」 コウは朝っぱらから、久しぶりにすっきりとした――ある意味では最悪な――目覚めを迎えた。 「コウ・・・うるさい」 「うるさいわよ、ちょっと早すぎるんじゃない?」 「まあたまにはこんな時間に起きるのもいいかもしれないけど・・・朝っぱらから大声は勘弁してくれ」 ぎゃーぎゃーと喚くコウに対して、まだ毛布にくるまって半分寝ぼけたような状態の他三人・・・黒精霊曰く、“愉快な仲間達”は全員そろってコウを責めた。責められたコウは顔を朱に染めながら、「俺じゃないっ! コイツが!!」と黒精霊を指差す。 「え? ボクじゃないよー? だって、コウが勝手に騒いだんだもん。ボクは朝だよ、って教えてあげただけだもん〜!」 てへっ、などという言葉を露骨にくっつけて、黒精霊は笑う。反論しようにも言葉が見つからず、すっかり目が覚めてしまったコウは、突如立ち上がり、タオルを手に歩き出す。 「顔洗ってくるっ!!」 言い捨てて歩く背は、理不尽さに対する怒りが見えるかのようだった。
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