三章 “断罪と死” 5
そんなこんなの事態のあと、忘れそうになっていた宿屋の主人の言葉をふっと思い出したコウは、話を切り出した。 「宿屋の主人がさ、あんたたちに依頼を頼みたいって言ってきたぞ。どうする?」 「依頼? 何の?」 「魔術師で強いのがいいんだとさ」 聞いたのはシルフィラで、彼は机に置かれた二日酔い薬の封をとき、中の粉末を備え付けの水で飲み下す。 「魔術師がいい? 魔術師って普通後衛なのに、魔術師だけを求めてるって?」 「いや、だけ、とは言ってなかったけど。あんたたちに、依頼があるらしいぜ」 コウはシルフィラが飲み干したグラスに新たに水をついで、自分で飲んだ。粉薬が少し残っていて、水が苦かった。それに眉をしかめながらも一息で飲み干したコウは、部屋にいる三人に向かって聞いた。 「で、どうする? 聞くだけ聞くのか?」 その返事に、ミナは難しい顔で考え込んだ。シルフィラとコウが使ったものとは別のグラスをとり、シルフィラ同様薬を含んだ。 「う・・・苦いわね。――さあ、どうしようかしら。どうせ今のところ受けた依頼はないし、めぼしい情報も聞かないし、聞くだけ聞いてもいいかもね」 コウはリィンに卓上に残った傷薬(軟膏)を放り、リィンは鏡も見ずに器用にそれを自分の背中やら腕やら足やらに塗りながら、のんびりした調子で返事をした。 「まあ、いいんじゃないか?」 そしてそういうことになった。
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