三章 “断罪と死” 9
少し離れたところで焚き木を拾っているのだろう。リィンがコウの気配を感じなくなってから、数分が経つ。そろそろ、あまり遠くへ行かないようにと、声をかけたほうがいいだろう。 「コウ、あんまり遠くへ行くなよ?」 大声ではないが、声を上げ、リィンはその場に立ち上がった。 「コウ、こっち来い! 焚き木も、これくらいで十分だろうし」 しかし、コウの返事はない。森を通り抜ける静寂が、リィンの声を木々に反射させて戻ってくる。・・・様子がおかしい。気配に聡いリィンは、ただ単にコウが遠くへ行ってしまっただけではないと、直感する。 「コウ? どこだ? ――コウ!」 叫ぶ。返事はない。 「くそっ! ――魔獣の気配なんてなかったぞ?」 もしあれば、気付く。絶対だ。リィンは、自分の察知力には自信を持っている。 「とりあえず、ミナたちのところに戻って・・・」 冷静に考えて、自分ひとりで出来ることは限られている。リィンは素早く身を翻した。
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