四章 “オブ・セイバ” 16
飛び込む知らせ。知っている誰かの訃報なら悲しいし辛いし、知らない誰かの幸せだったら一緒になって祝ってあげる。 知らせというのは、運ばれるものだ。――良きも、悪きも。 朝になってみるとシルフィラまで宿屋から姿を消していた。そのことに慌てたリィンが「神隠しだぁ!」などとバカをほざくのを拳で止め、ミナは一人一階まで来ていた。受付をしている主人に聞いてみると、シルフィラは朝早いうちに出て行ったという。その話を知らせるために部屋まで戻ると、リィンはベッドの上で伸びていた。 「ほら、リィン!シルフィラは朝早くに出てったらしいわよ!安心しなさい、消えたのは今のところコウ一人よ」 だがリィンは伸びたまま、聞いてるんだか聞いていないんだか。ミナはため息をついて、情けない、と嘆く。その嘆きを聞いて飛び起きたリィンは「情けなくなんかない!」と叫んで、また伸びた。 「・・・お前、強すぎ」 リィンは殴られた鼻を押さえながら呻く。ミナは得意げに「あんたが弱い」と断言する。そうしたらリィンはもちろん落ち込んで・・・かわいそうに思ったわけではないが、ラチがあかないと思ったミナはそこで話を切り上げた。 「とりあえず、昼まで待ちましょ。シルフィラがどこに行ったか判明しないけど・・・どうであるにしろ、待つしかないんだから」 ――そうして太陽が真上に昇るまで、二人は宿屋で待機していた。 「帰ってこないわね・・・」 昼飯を下の食堂で食べながら、ミナは難しい顔でうなった。 「そうだな・・・」 リィンも同じく何かしらほおばりながら、うなるように声を出す。 昼になっても、シルフィラは帰らない。なんの情報も入ってこない。そろそろ待つのも限界で、二人は、アテはなくとも探しにいこうと画策しているところだった。そこに・・・。 「・・・あんたらやっぱり、シルフィラと一緒に行かなかったんだな」 尋ねる声にすさまじい速さで振り返ると、そこには一見なんの変わったところもない普通の青年が立っていた。茶色い髪と目、町の者が着ているのと同じ服。年齢はシルフィラと同じくらいだろうか。 「お前、誰だ?」 リィンが警戒心をあらわにして聞くと、青年はまず名乗った。 「俺はランっていうんだ。・・・この町の情報屋の一人だ」 その言葉に、ミナとリィンは顔を見合わせる。そして示し合わせたかのように同時に言葉を発し、聞く。 「「・・・なんの用?」」 その言葉に、ランと名乗った情報屋は頷き、真剣な顔で話し出す。 「端的に言うが・・・シルフィラがコウという少年を助けに、 リィンは驚き、ミナは眉をひそめる。 「・・・助ける?」 「・・・ 交互に呟けば、ランは説明している間が惜しい、と二人を促して宿屋を出た。話は歩きながら・・・そう前置いて、
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