四章 “オブ・セイバ” 26
「・・・帰ろっか」 シルフィラがすっと手を差し出す。コウはその手をとらず、一人先に歩き出す。苦笑が後ろから追ってくる。 コウの後ろではなく、横に並ぶ。シルフィラはぶすっとむくれたその横顔を見て、優しく笑いかける。 「コウ、傷だらけだね」 信者たちにやられて、顔にも足にも引っかき傷のようなものをつくり、服はところどころ破れている。シルフィラは、コウにただ笑いかけた。 「・・・ありがと」 小さく言った言葉は、治癒魔法の詠唱と一緒に、コウへと届いた。 宿屋に帰ると、二人ともミナに頭を殴られた。一発や二発ではない。何発もだ。リィンとランドールが止めなければ、きっと気絶するまで殴られただろう。 三者三様の思いで待っていた彼らの、喜び方は色々だった。バカだとののしり怒った、ミナ。抱きつかんばかりに涙する、リィン。離れたところから淡く微笑む、ランドール。その表現は違っても、思いは一つだった。 ・・・嬉しい、と。無事でここに帰ってきて、嬉しいんだ、と。 その思いに、シルフィラはふわりと微笑んで、コウは視線をそっぽを向いてテレながら。 「ただいま」と、呟いた。
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