<月> 二章 “親と子” 1
どの高校に進みたい? 誰もが簡単に、そんなことを訊く。でも、高校に行きたくない者は? そもそも義務教育を終えた後のことなんて考えてもいない者は? 一体、どう答えればいい。 進路を決められないのって、そんなに悪いことだろうか。進むのを迷うこと、躊躇うこと。後ろを振り返ってばかりいること。手探りで目の前を探るのが恐くて、ずっとその場でくるくるしてる。 それが、そんなに悪いことだろうか。自分のことほどわからなくて、でも自分がここにいることだけは主張する。それは、いけないことか? ・・・生まれてしまったからには生きようとすることは、罪なのだろうか。 ――責められて責められて追い詰められて。それでも踏ん張っている努力を、誰も認めてはくれないのか? 光良は、何度目かの職員室呼び出しを受けて、説教の最中だ。進路の紙はずっと白紙。今は十一月、もうまもなく私立の推薦入試が始まる。高校に行かず、就職もせず、それでも生きていくなんて甘い考えはない。でも、だからどうすると言われても答えられない。 いっそ、どうすればいいのか誰かが教えてくれればいい。ひとに決めてもらうことほど楽なものはない。 「木崎、はっきりしろ。お前はどうしたいんだ」 先生こそどうしてほしいんですか、とそう切り返しながら、どうしたいのだろう、とそう思う。 本当に、難しい。自分の思いというものは。
|