<月> 三章 “撫でし子” 2
渋々シャワーを浴びさせられ、用意されていたマスミのジャージに着替えて、風呂場を出て、すぐ。ああはめられた、と思った。 居間でマスミとヒビヤが手招きしていて、その後ろにマスミの母と父と弟がいる。手招かれるままに近付き、訊く。 「おい、女子どもは?」 マスミとヒビヤはどこか申し訳なさげな顔をして、 「あんまり遅くなる前にって、帰った」 「それで、あの、楠葉先輩が・・・木崎先輩の家に連絡して、今日は真澄先輩の家に泊まりますって、あの」 「・・・そう言ったのか?」 「すまん・・・。俺達じゃ、止められなかった」 何を考えているのかわからない。ただただ、ため息ばかりが出る。 「兄ちゃん、いつまで話してんの。夕飯!」 「ああ、悪い。・・・光良、お前も食ってけよ。親が張り切っててさ」 見れば、今日は鍋。大人数で囲むにはもってこいだ。席数は六つ。真澄家四人と、ヒビヤと光良の分。ここで断るのも大人気ないと、光良は浅く息を吐き微笑を浮かべて、 「すいません、ありがとうございます。色々お世話になります」 ・・・ここで夕飯を食べたら、もう泊まりは決定だろう。断固拒否するのも非常に面倒で、愛想を振舞うことに決めた。
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