<風> 一章 “探しビト” 4
深夜。煌々と照る二つの月が妙に鮮やかだ。部屋からそれを眺めながら、ちょっとだけぼんやりしてみる。 「・・・会ってみるかー?」 ぼんやりしつつ、ぽつりと呟く。すると背後の剣呑な気配が急に濃くなって、おちおち意識を飛ばしていられない空気となる。振り返ると、無防備に寝ていたら寝首をかきそうな形相をした相棒が、親の敵を見る目で・・・訂正、親の敵を見る“ような”目でにらみつけている。 「・・・」 「・・・」 「・・・そんな怒んなよぉ、シン」 情けない声を出して先にギブアップ。相棒のまとう空気はあまり変わらなかったものの、視線だけはふっと逸らした。 「聞いただけじゃん。それにさあ、考えすぎじゃないか? シンパスって名前は珍しいけどいなくはないしー、青い髪はもっと珍しいけど時々あるしー、シルフィって名前はまあまあ聞くしー、金髪灰目はザラにいるしー、第一・・・お前のアレは男だろ?」 「勘違いされそうな台詞を吐くな。・・・確かに、アイツは男だが」 女装しても違和感を感じないだろうと想像出来るくらいには、幼い頃からキレイだった。 シンパス。青い髪、青灰色の目。シルフィ。金髪灰目、美人な女。 条件は多く当てはまる。だが、無視しきれない事柄が一つだけ。 「・・・男ならば、シルフィラだ。だが、なぜ女なんだ?」 女装だろ? 軽々言ってくれるが、その理由がわからない。探していることを隠さず人に広めているのに、自分自身は偽る。だが、名前も身にまとう色彩も全くひねりがない。それなのに、なぜ女装? 「趣味じゃないか?」 無性に、頭をかきむしりたくなった。
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