fate and shade 〜嘘と幻〜

<風>   一章 “探しビト”   5





 賞金稼ぎと呼ばれる者は、意外と多い。理由一、一度に大金を手に出来るから。理由二、小物から大物まで、自分達のレベルを退治依頼魔獣と合わせられるから。そして理由三、ワケあり。・・・実は、これが最も多い。

 危険だが、金は稼げる。依頼さえ完遂すれば、信頼も名前もなくていい。そんな仕事が、たくさんあふれかえっているはずはない。ワケありで、自分の顔も名前も広めたくないモノはいる。それは例えば犯罪者だったり、逃亡者だったりするだろうが、彼らはひとところに長く留まれない。マトモな職にありつけない。そして、賞金稼ぎ・・・魔獣を倒すヒトの存在は、いつどこだってひっきりなしに求められている。

 ようは、腕さえあれば誰だろうと問われない。それで、ワケありな彼らは一番簡単で手っ取り早い道として賞金稼ぎを挙げる。そんなわけで、酒場でちょっと会って話したくらいのヤツにそうした深い事情を尋ねたりするのは、暗黙の了解でタブーだ。だが、彼らがもうちょっとじっくり事情を尋ね訊いてくれていたらと、思わずにはいられない。シルフィラじゃないと、もしくはシルフィラなのだとわかれば、こんなもやもやした気持ちでいなくてすむのにと。

「・・・シン、眉間」

 呆れた顔で自分の額を指差し、しわが寄ってると教えるガディスに、組んだ腕を解いてまばたきを一つすることで返事に代えた。よく指摘されるので今更返事もしない。

 ガディス。やや赤みがかった茶の髪は短くつんつんして、くりっとした大きな瞳はとても明るい茶色。背は、シンよりも頭一つ高い。よく焼けた肌はきれいに焦げ茶色で、服は上が薄茶、下が黒なものだから、全身見回してやけに茶色っぽい。年は、二十四、五といったところだろうか。横に並んで歩く彼よりもやや年上で、腰に下げた剣から、剣士・・・つまりは賞金稼ぎなのだとすぐ知れた。

 相棒、シン。なんの特徴もない茶色の髪に、一度見たら忘れないような青灰色の目が似合うような、違和感があるような。視線はきつく冷たい印象で、にらまれたらすくんでしまうような鋭さ、強さが見え隠れしている。腰にはガディスと同じく一振り剣を下げているが、やや細めで刀身も短い。短剣に近く、その細い体つきからも接近戦向きではなさそうだと推測できた。

 彼らは常に二人で行動し、弱くてこまごました魔獣からやや強めの魔獣まで、地道に倒して地道に稼ぐ堅実派だ。

 二人は今現在、昨日酒場で仕入れた魔獣の情報を元に、次の村へ移動の最中である。いわく、“畑を荒らす魔獣らしき小動物あり。退治求む”。地域密着型の、実に地味な、そして切実な依頼である。

 朝早く宿を出て歩いて、現在昼前。前夜の村も大きくはなかったが、さらに小さくひなびた様子のコブナ村は、もう目と鼻の先だ。




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