<風> 一章 “探しビト” 6
「あんれまぁ、こな依頼に、ま三人もきでくんで」 太陽が真上に昇りきると同時くらいに村に入り、依頼人を見つけて会った(腰がほぼ直角に曲がった、小さいがハキハキとしたおばあさん。どうやら村長のよう)ガディスとシンは、おばあさんの第一声に思わず辺りを見回した。・・・はて、三人? 「・・・三人、いますか?」 ミえるのだろうか。元気ではあるがあまりの高齢っぷりに、なんとなくそんなことを想像してしまう。失礼だが、気になって訊いてしまうガディス。おばあさんはかっかと笑って、そいう意味じゃなんよ、となまりの強い言葉で事情を説明した。 「朝早ぐのことなんけど、依頼聞いたっで、もう、一人来てくれでだん。魔術師のお嬢さんでね、ありゃぁ別嬪さんだったんね。近くに巣があるってで、すぐ見つげだって、倒しでくれたいよ」 だがらね、もう解決したんですよとおばあさんは告げて、でも折角来てくれたんだから昼飯くらいはご馳走しますよ、と丁寧な・・・なまりはあってもそう思わせる口調と態度で続けた。ごく善良な彼らは、何もしてないんでいいですよと遠慮したが、おばあさんは断る二人を押し切って、パンでも持ってきましょ、台所へと消えた。 「・・・魔術師?」 それだけではわからないが、魔術師の単独行動は結構珍しい。通常、魔術師といったら後衛だ。一人でのハンデが大きいから。さらに、別嬪のお嬢さんというのも気になる。 「それっぽい噂聞いてたよな・・・」 というよりも、そのせいでシンが悩んでいる。 そこに、おばあさんが包みを持って現れる。道中食べてください、と親切で優しい言葉をかけ、二人の前に一つずつ差し出す。朝焼かれたものなのだろう、まだ暖かさと柔らかさを残したそれにはなんの具も入っていないし、添えものもなかったが、おいしそうだ。 「どうも、ありがとうございます。それで、ちょっとお尋ねしたいのですが・・・」 頭を下げて礼を述べ、続けてシンが尋ねる。 「その、魔獣を倒したという魔術師・・・シルフィという名前では?」 おばあさんは、さあどうでしょうね、名前は訊かなかったもので・・・と申し訳なさそうに言いごもる。なのでシンは質問を変える。 「鈍い金色の髪に、灰色の瞳をした女性?」 「ああ、そでんね」 あのお嬢さん、お金よりお弁当の方がいいなとそのパンを持っていったんです。それですぐに去って行ってしまったんですよ。確か、人を探してるとかなんとか・・・。事情を説明して、おばあさんは、それがどうかしたのでしょうか? 警戒心のまるでない笑みを浮かべ尋ね返す。シンは、いえ気になったものでと素早く切り返し、結局二人は、何もしていないが昼飯をタダで手に入れ、村を出た。
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