<風> 一章 “探しビト” 7
「なんか、悪いなー」 受け取った包みを、ありがたいが良心の呵責があります、と顔に書き書き眺めるガディスに、シンは、 「・・・」 返事ナシ。相槌一つ打ってくれない相棒にため息。おーい、シーンー、呼びかければやっと、そうだなと返す始末だ。ラチがあかない。相棒の悩みに解決策が掲示されなければ、こうしてことあるごとに意識を飛ばされるのかと、ガディスはすでにうんざりし、一旦は却下されたもののもう一度同じ案を打ち出した。 「なあ、会ってみよーぜ」 「いやだ」 即切り返し、ノックアウト! とはならない。自分より頭のキレるヤツが解けない問題。しかし、例えば答えが二つあって、その一つは解けているという場合・・・簡単な方法があるのに避ける理由が“スキキライ”ではバカらしい。 「ダーメ。会ってみろよ! 別に、いいじゃんか。正面きってお話してみましょ、なんて誰も言ってねーんだからさ。遠目にちょっとチラリと見て、知ってるヤツか知らないヤツか確かめてみるだけなんだからさ!」 どうしても会いたくない。その理由も、それにかけるシンの気持ちの強さも、ガディスはよく知っている。同時に・・・長い付き合いだ。どれほど、会えるならば会いたいと焦がれているかも、よおくわかっている。実際、会いたいともらしたこともあるのだ。・・・あれはシンにとっては不覚だっただろうが。 「・・・いや、だ」 それでもなお、意地を張る。らしいといえばらしいし、いい意味でも悪い意味でもこれは相棒の美徳である。が、この場合は・・・ 「会・う・ん・だ、シン」 迷惑を被るので遠慮したい。どうせ、会わなければ始まらないのだし。 「・・・い」 「しつこい。どうしてもヤなら、他の方法を教えてくれよ。今すぐ実行出来るヤツな」 お前なら簡単だろ? と付け加えるのを忘れない。シンの言葉が止まる。わずかに眉を寄せにらむ姿に迫力はあるが、慣れたモノには効果ない。ん? 促してみれば、ふっと息を吐いて緩く首を横に振った。 「・・・ない。わからない」 会ってみるのが一番早いと、シンも理解しているのだ。会いたくない、もう一度小さく呟くその声には、しかし諦めが混じっている。あと一押し。あと一押ししてやれば。・・・結局のところ、自分の決断で踏み出すのが躊躇されるだけなのだろう。普段は過剰なほど自信にあふれかつ冷静なシンだが、この件に関しては、まあ、仕方ない。 「じゃ、一度シルフィさんってのに会ってみる。決定!」 たまには年上として、相棒として、頭がキレて腕も立って普段非の打ち所もないコイツを引っ張ってみるのも悪くない。そしてシンは、戸惑いながらも確かに一度頷いた。 賞金稼ぎの旅はたいてい、行く末知らず、運まかせ。 この旅路・・・隠れて逃げるという選択肢を、そろそろ止めてもいい頃かもしれない。その一歩を今、彼らは踏み出したのかもしれない。
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