〈風〉 三章 “ヒト殺し” 1
届いた手紙には、悪いことだって書かれている。それは“チチキトク スグカエレ”のように・・・。急なコトバは手紙に託すのが一番早いけれど、その言葉が届いて、急いで旅に出て、故郷に帰り着いた頃、父親はまだ、生きているだろうか? ――だからそんな場合、本当はこう書くべきだ。“チチシンダ スグカエレ”と。たとえそれが、杞憂に過ぎたとしても。 今何を考えているかといえば、それと似たようなコトだ。 情報は新鮮さが命。隊商の一つに託されたこの情報は、推測するに約三日前。依頼ではなく個人的頼みをきいてもらって毎日手にするコレ、今日の内容に関してはまず信憑性を疑った。 “対象、目的と遭遇す。のち、別れて去る” たった二行の短い文章。だが、頭を正確に働かせ始めるまで文を読んでから相当あった。 「・・・会って、別れた?」 ここ十年ほど果たせなかった望みをこうも簡単に叶えてくれて、しかも不可解な行動によりまた別れてしまった二人。シルフィラが今目の前にいたら、胸倉をつかんで事情をつぶさに聞きだしていただろう。ナニ考えてんだ、と。 「・・・シンパス」 同時に、とても安堵する。 シンパスは、生きていた。それは、ランにとって何よりの吉報だった。
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