十一章 “水晶のお姫様” 2
王宮の宝物庫に入りたいのだと、マールウーカは告げた。どうしても、行かなければならないのだ、と。 「宝物庫なんかに、何の用だよ」 「……ごめんなさい、言えません」 「何でだ。やましくないなら、言えるだろ?」 「……ごめんなさい」 詳しい理由を伏せるマールウーカを、宥めるように責めるのはリーエスタ。十織とルウロは二人の間に入るでもなく、並んで先導する。 今四人は、宝物庫への道を歩いている。鍵はルウロが開けるらしく、事情を聞いたルウロはその時、私に話してよかったでしょうと優しく微笑んだ。十織はそれに、悔しげな笑みを返したりもした。 十織にもわからない。何故、マールウーカの願いをきいてあげたいなどと思ったのか。 ただ、とてもひたむきで、あまりに必死で、放り出す気になれなかったのだ。たとえ一目で、人間ではないとわかっても。 そうこう考えているうちに、宝物庫の前に着く。ルウロがすっと右手を前に伸ばせば、その手の平にどこからともなく光が灯る。丸い光は徐々に集束し、小さな鍵が現れた。 「マールウーカ。開けますよ」 宣言されたマールウーカは緊張した様子で頷き、お願いいたしますと答えた。
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