何かが変わると思った

十二章 “水面の夢”   4





 顔を洗う時、水に映った自分の顔をふと見つめてみる。黒髪黒目。きつい目付きと薄い唇。

「……」

 ――そこにあるのは、誰の面影か。

 

 

 

 

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「全く、困る。……勝手を働くものが多い」

 呟き、立ち上がり、空を見る。綺麗に晴れて、雲がゆっくりと流れていく。

「こんなこと、最近までなかったのだがな」

 最近は、ひどい。大人しくしていた者達が、今になって暴走している。理由は大体、見当がつく。彼らには、わかるのだろう。

「……潮時、か」

 

 ――世界は回り、時代は移る――

 

 それは実に当たり前のことで、日々は少しずつ変化していく。その変化を認めずに抗うのは、愚かなことだ。流されるままに生きる。それが賢い。

「でも、こういうもの達は、仕方ないのだろうな」

 一つのものに囚われ、縛られて生きる。……賢くはないが、それもまた、各々の生き方であるのだろうと、そう思った。




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