何かが変わると思った

十三章 “遭遇する似た者同士”   1





 キィスは廊下を歩いていて、その二人を見て、音を立てて凍りついた。青と白、寒色のを持つ二人の青年に、見覚えはなかった。が、それでもわかる。……その二人が、たとえ後ろ姿でもわかるほど、尋常ならざる存在であることは。

「……あ、あ」

 歯の根が合わず、かちかちと鳴る唇から空気とともに声が漏れる。それを聞きつけた二人が、揃って振り向いた。青灰色の目と、金紫色の目が、キィスを見据える。

「わ、ああぁ!」

 そしてキィスは、あまりの恐ろしさに全力でその場から逃げだした。

 

 

 

 

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 ……ということがあったんだ、とキィスが蒼白な顔で勢い込んで語るのを、セレフェールは冷めた目で見やる。

「へえ」

「何でそんな冷めてるんだっ?! やばいよ、あれ、何だよあれ!」

 軽く錯乱しているキィスに向けて、セレフェールは深いため息をつく。それが何とも焦燥した様子なのにようやく気付き、キィスはやや冷静になる。

「……どうしたんだ?」

 そう尋ね、そういえばトールはどこへ行ったのかとそこらを見回す。セレフェールはもう一度ため息をつき、両手で顔を覆ってうつむく。

「……トールが、消えたわ」

 キィスは口をぽかんと開け、嘘、と呟いた。




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