何かが変わると思った

十四章 “窓の風景”   1





 今日は休みだ。セレフェールやキィスは働いているので、十織一人だけで休みを潰さなくてはならない。街に下りてもいいが、今日はのんびりぼんやりしたい気分で、行ったことのない東塔の方面へ足を伸ばすことにした。

 西塔には近寄るなと言われるが、東塔については何も言われない。まさか、サイアスのような人物がもう一人住んでいるなどということは、ないだろう。そう思って行ってみれば、東塔にはちゃんと鍵がかかっていた。

 ぐるりと周囲を一周してみる。入口以外に扉はない。素っ気ない灰色の石で建てられた塔には、窓もない。西塔には最上部に窓があった。東塔には窓すらないということは、鍵がなければ、中の様子は誰にもわからない。

 何があるんだろう、と興味は惹かれる。が、鍵を壊してまで入りたいと思うわけではない。十織はしばらく後、大人しくその場を去った。

 

 

 静かに廊下を進んでいれば、目の前からぱたぱたと軽い足音が響く。歩調を緩めて前を見れば、廊下の向こうから、二つの小さな人影。

「ファリオ様、と、キラ様?」

 二人は十織の前まで駆けてくると、ぴたりと立ち止まる。そしてじっと、十織を見つめる。

「な……何? 何、ですか?」

 その視線にたじろぐ。二人はしばらく十織を見つめていたかと思えば、おもむろに手を伸ばす。

「……?」

 何だろうと思いながらとりあえず手を差し出してみる。するとファリオがその手を掴み、十織の体を反転させて元来た方向に歩きだす。

「ちょ、何?」

 手を引かれるままファリオの後をついていけば、もう片手をキラがとる。両側から引っ張られ、意味がわからないままに十織は引きずられた。




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