十四章 “窓の風景” 3
そして気付けば、泣いていた。誰かが、肩を優しく抱いている。涙に曇った目を向ければ、寄り添っているのはリーレスだ。 「……王、様?」 掠れた声を出せば、リーレスが十織の目をのぞく。大丈夫かい、と労られ、こくりと頷く。 「……?」 何が起きたかわからず、呆然とする。そんな十織を支えて立たせ、その涙を袖口でそっと拭いながら、 「すまない、トール。子ども達が、迷惑をかけた」 いつになく真剣に謝られ、十織は緩慢に視線を動かす。その先に、二人の子ども。ファリオとキラは、作り物じみた無表情で十織を見ている。瞬間、何が起こったのか一気に思い出し、縋るようにリーレスの腕を掴む。 「トール、すまない。大丈夫、もう二度とさせない」 滅多になく怯えた様子の十織に痛ましげな目を向け、リーレスはその背を撫でる。 「……すまない」 謝りながら、ただ優しく。 ========== その窓を開ければ、どこへでも行くことができる。海の上でも、雲の上でも、望むがまま。そんな窓が、ある。 けれど、その窓は一方通行。……戻ることは、できない。
|