何かが変わると思った

十七章 “神と神”   3





 ジルオールはこの“世界”について十織に説明した。

 

 かつて二人の神が創ったこと。一人の神は遥か昔に去ったこと。

 二人の神がそれぞれ人間と精霊を創ったこと。

 今、残りし神も去ろうとしていること。残される被造物達のこと。

 そして、半精霊という存在のこと。

 

「……世界に結ばれる、って」

 どういうこと、と問えば、ジルオールは淀みなく説明する。

 

 人間でも精霊でもない半端もの。神との結びは弱い。彼らは生まれた世界に繋がれ……肉体を失くした後、呼び寄せようとする神の声にも、気付けないことが多い。

 

「未練と呼ばれるもの。それに惹かれれば、一生、この地へ留まることになる」

 ――そうしてずっと、求め続け、悔やみ続けるのだ。

 

 

 お前もそうだと、ジルオールは告げた。

「異なる世界の者。その魂もまた、想いによってこの世界に繋ぎ止められる」

 もし、後悔するつもりがないならば。未練を断つ覚悟があるならば。留まればいい。

「神が去れば、その恩恵も消え失せる。帰れぬぞ。二度と」

 

 ……それでも、この世界で生きるのならば。

 完璧であれ。人間とは呼べぬほどに。

 

 

 

 

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 ジルオールによって王宮へ戻された十織は、ひどく固い表情で、真っ直ぐに廊下を歩く。進む先にあるのは蔵書室ではない。……王の間だ。

 リーレスの下へ行けば、そこには四人の宮廷魔術士が揃っていた。とても珍しいことだ。彼らは一様に険しい視線を十織へと向け、何用でしょうか、とルウロが代表して口をきいた。

「王様」

 十織の突然の登場に驚いていたリーレスは、呼ばれて小さく首を傾げる。常のように微笑みを見せようとして、十織が異様に真剣な顔をしているのに気付き、笑みを収める。

「……どうしたんだい?」

 問うリーレスに、十織は厳かに告げる。

 

「王様。私は、帰ります」




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