四章 “魔術師寮と騎士寮の隙間” 2
――魔術師寮と騎士寮の建物の間には、ひと一人ぎりぎり通れるほどの隙間がある。その隙間の向こうには、精霊の住処があるという。 馬鹿馬鹿しいとは思う。が、その馬鹿らしい試みに、巻き込まれたとはいえ付き合っているのは、紛れもない事実だ。物怖じしないエルグの態度は鬱陶しいが、心地よくもある。 「これかあ……結構狭いな、っと」 隙間に体を横向きに入れたエルグは、蟹歩きで一行の先に行く。その後を十織が、結構楽々追う。さらにガイルジオが続こうとして、 「……おい、ちょっと待ってくれ! 体が入らねえっ!」 そう叫ぶ。それはそうだ、三人の中で一番大柄なのはガイルジオである。 「あー……、じゃあ、待っててくれ。俺達、先進むから」 「ちょっ! 置いてくのかよ、ひでえ!」 エルグ、トール! すがるように名を呼ばれた二人は首だけガイルジオの方を向け、 「まあ、しょうがないだろ?」 「無理矢理入ってこないでよ。詰まったら困るから」 呆気なくそう言い捨てた。ひどすぎだろっ! と悲痛に叫んだガイルジオは、狭い隙間に顔だけ差し込んで二人を見送った。 ……その後ろ姿が非常に情けなかったことは、言うまでもない。
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