何かが変わると思った

六章 “西塔の住人”   4





 塔を下りた十織は、三人の青年に出迎えられた。

「うわ」

「お前か!」

「予想できたことだね……」

 どれもうざったらしい人物で、十織は顔をしかめるとその横を無言で過ぎる。

「トール、無視するな!」

 が、それを三人……特にアルスが看過するはずなく、腕を掴まれ足を止める。

「何。放せ」

 ただでさえ困惑と精神的疲労で苛々しているのに、会いたくもない者に会ったのだ。普段よりもなお低く冷たい声音で睨みつければ、アルスはやや手の力を緩める。

「……お前、どうして、ここを上った?」

 答えずにはぐらかすとそれはそれで面倒で、十織は短く答える。

「書類がここまで飛んで、塔の上を見たらひとがいた。だから上った」

 その簡潔な答えに、そうかとアルスは手を放す。そのまま身を翻した十織の背に、今度はリーエスタが声をかける。

「塔の上でさ。“あのひと”と、何を話したんだ?」

 この塔にいた青年のことを、何やら知っているらしい。十織は体ごと向き直り、あれは誰、と質問を無視して問う。リーエスタはそれに困った表情をする。上手い言葉が見つからず、ええとと言葉を探していると、横からディクレイドが救いの手を差し伸べた。

「この塔の、住人みたいなものですよ。“あのひと”は」

 それは明確に特定する言葉ではなかったが、十織にはそれで十分だった。皮肉げに笑い、

「へえ。あのサイアスとかいうやつ、こんな場所に、住んでるんだ? ……だからあんな、何の意味もないことばかり、考えてられるんだ」

 そう吐き捨て、今度こそ三人を置いて歩き去る。

 

 

 その背を見つめながら、

「名前……」

「あちゃー、気に入られたんだ」

「全く……本当に、ろくでもない娘だよ」

 三人はそう言い合い、揃ってため息をついた。




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