何かが変わると思った

七章 “城下の店”   1





 城下にはいくつか、おかしな噂のある店がある。十織はその日、セレフェールに連れられて、そのうちの一つを訪れていた。

「こんにちは、おじさん」

「ああ、いらっしゃい、セレフェール」

 ひとの良さそうな顔をした壮年の男性が、二人を出迎える。その男性は目ざとく十織に目を留める。

「そちらのお嬢さんは、初めてですね。私はゲルグと申します。貴女は?」

 柔和に微笑む。十織はにこりともしないで、片倉十織、十織が名前です、と答える。

「カタ、ゥラ……トールさん、ですか。珍しいお名前ですね」

 その言葉に、この子は異世界人なのよ、とセレフェールは答える。そして、

「さあ、今日も頼んだわよ? ……何を選んでくれるのかしら」

 そう挑戦的に笑う。はてさて、何でしょうねえと柔らかな笑みを崩さないゲルグは、セレフェール、十織を順番に見つめ、笑みを深くする。

「さて。今日も、貴女達に入り用なものを、私が選んでさしあげましょう」

 “何でも屋”当主ゲルグは、そうお決まりの言葉を告げた。




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