七章 “城下の店” 3
セレフェールとの買い物を終え部屋に戻った十織は、それを見つめて小さく息を吐く。 十織はそれに見覚えがあった。四角い枠、取り外せる背面の木板、前面には透明な覆い。裏側には立てられるように支えがある。 「写真、立て」 それは、何とも簡素な写真立てだ。写真などないこの世界に何故こんなものが、と思う。 「必要な、もの。……これが?」 “出されれば必ず思う。ああ、これが欲しかった、と” ――写真立てには写真が必要だ。飾る写真は、とっておきのものだ。見ていて嬉しいもの。笑顔になれるもの。 十織はその写真立てを、ベッド脇の引き出しの奥深くに隠すよう仕舞い込んだ。
|