セリオールの手記

エピローグ





 ぼくは、夢のある話を書こう。

 世界の成り立ちや、神の想いは、他の筆記者に任せよう。

 

 ぼくは、ひとの想いを文字としよう。

 かけがえのないひとのことを、文字に記して残そう。

 

 

 ぼくがセリオールと出会って十年の後、ぼくは初めて、本を世に出した。

 その題は“セリオールの手記”。人々に、筆記者の孤独を知ってもらいたいからだ。リューという友のことを知っていてもらいたいからだ。

 

 ひとには、出会いと別れがあるということ。その素晴らしさを、覚えていてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼくが書いた初めての本、それがきっかけで、ぼくは“書の父”と呼ばれるようになった。少し、恥ずかしい。でも、とても誇らしい。ぼくの本を読んだ者は、セリオールのことを、リューのことを、思いだすだろう。ならばぼくは、沢山の出会いを、別れを、書き続けようと思う。

 セリオールとの出会いから三十年、彼は、もういない。最後は、寂しくなかっただろうか。ぼく達が一緒にいて、安心していけただろうか。きっと大丈夫だったと、そう思う。いつかリューが追いつく。そしてそのずっと後に、ぼくも追いつく。それまで二人で、仲良くしていてほしいと思う。

 

 

 ――セリオール、そしてリュー。ぼく達は、出会えて、よかったよ。




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